家づくり読本

家を建てる前に知ってほしい

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住宅の見えないところを考える

 

住宅を建てる時、圧倒的多くの方は、「外見」「内装(雰囲気)」「間取り」「住宅設備」の4つを気にします。この4つは「見えるところ」だから当然と言えば当然です。住み始めたら毎日目にしたり、触れたりするところですから。

ですがこれから家を建てる方にぜひ知っていただきたいのは、住宅の「見えないところ」こそしっかりと考えていただきたい、ということです。

停電が続くと、普段は全く気にもしない電気のありがたみがわかるように、住宅の「見えないところ」こそが、本当は暮らしを支えているのです。ですから、決して住宅会社に丸投げで任せっきりにするのではなく、ぜひ知っていただきたいと思います。

 

  1. 外壁防水シート
  2. 断熱材
  3. シロアリ消毒
  4. 気密
  5. 内部結露
  6. 省エネルギー基準
  7. 断熱、気密

 

外壁防水シート

 

外壁防水シート

家の外壁には、外から雨水が侵入しないように外壁防水シートというものが使われています。外壁材の内側にあるので、ほとんどの方は見たことがないかもしれません。

 

外壁の防水紙には、

・透湿防水シート(通気層を設ける)
・アスファルトルーフィング(通気層を設けない)

があります。

 

今回は透湿防水シートに関してお話しします。

各メーカー様々な種類のシートがあり、1mx50m(45㎡)巻が多いです。

価格が、Aタイプ 3,000円、Bタイプ 6,000円、Cタイプ 15,000円があるとします。

 

ここで外壁面積200㎡の場合に

Aタイプ 15,000円、Bタイプ 30,000円、Cタイプ 75,000円の費用がかかってきます。

 

できるだけ費用をおさえたいという気持ちもわからないではありませんが、
トータル数千万円の住宅を建てるのですから、安いからとAタイプの防水紙は絶対に選ばないでください。

防水シートの費用を数万円安く抑えたばかりに、壁から浸水し、結果的に数千万円の住宅がボロボロになってしまう…。そんな悲しい結果になりかねません。

 

Aタイプは破れやすいです。

Bタイプは破れにくく、

Cタイプは遮熱機能が付き、さらにカッターの刃がダメになるような強度を持った防水紙です。

 

是非、ご新築の際には使用される透湿防水シートのサンプルを用意し、カッターで切ってみてください。
切れば、分かります。

 

より良い透湿防水シートを選んでいただき、安心・安全な防水をして建物を長持ちさせていただきたいと思います。

 

断熱材

 

少し長くなりますが、大事なところですので、ぜひお読みください。

 

断熱材の施工方法には、

・大工さんなどによる充填断熱施工
・専門業者による現地施工

の2つがあります。

 

まずは、大工さんなどによる充填断熱施工についてです。

大工さんなどによる施工の場合、しっかりとした施工ができる大工さんが未だに少ないという建築業界全体の問題があります。

例えば、次の施工事例の写真をご覧ください。

断熱材をただ入れる施工が下の写真です。

断熱材をただ入れる施工

防湿フィルムを間柱の側面に止める方法です。
この施工ですと、新築、リフォームともにアウトです!!
根太工法であれば、気流止めも必要になってきます。

 

一方、断熱材をしっかりと施工した写真が下です。

断熱材をしっかりと施工した写真

防湿フィルムが柱、間柱正面にかかっていること。防湿フィルムがきれいになっていること。これが重要です。

 

一般の方が見ると両者はほとんど違いがないように思われるかもしれませんが、断熱効果という観点からすると天と地ほどの違いがあります。同じ材質を利用してもこのことを知った上で施工しているのか、これが重要です。

 

また、グラスウールは悪だと考える方もおられますが、グラスウール自体が悪なのではなく、施工がしっかりできないから悪なのです。

もう一度言います。
グラスウール自体は悪くありません。施工が難しいから悪なんです。

実際、北海道で「HEAT20 G2レベル」(2020年省エネ基準レベルよりもはるか上の基準)を目指されている工務店さんの断熱材はほぼグラスウールです。

 

次に、専門業者による断熱材施工についてです。
専門業者による断熱材施工は、断熱欠損がありませんが、グラスウールに比べてコストがかかります。また、断熱性能が劣ることもあります。

ですから、性能とコストを考えるならグラスウールをオススメしますが、先ほどお話ししたように、この場合は施工能力が必要になります。

 

断熱材というと断熱効果がある「素材」にばかり目が行きがちですが、実は、その施工がとても大切だということをぜひ知っていただきたいと思います。

大工さん任せの断熱材施工は絶対に避けてください
しっかりと現場監督が管理している断熱材施工を求めてください。

 

当社は、田中善隆が断熱材施工を行いますので、施工能力と断熱材の知識には負けない自負(この言葉好きです。。。)があります。

当社が開催する「構造見学会」では断熱材の施工状況をご覧いただけます。
ご説明しないとわかりにくい部分ですが、見えない場所こそ大切にする当社のスタイルをご体験いただきたいと思います。

 

グラスウールはふっくら入っているのが正しい施工 

グラスウールは、スポンジジケーキと思ってください。ふっくら入っているのが正しい施工です。
(写真を見やすくするために撮影しています。)

 

追記:2022年4月よりセルロースファイバーを標準仕様にしております。価格は上がってしまいますが、その分グラスウールの7倍もの蓄熱性能があるセルロースファイバーは永続的に毎年のランニングコストを下げてくれる断熱材になります。

室内温度も比較的安定するため、暑い夏や寒い冬も、少しの冷房や暖房を使うだけで、ストレスなくお過ごし頂けます。
また、グラスウールはガラスで出来ていますが、セルロースファイバーは直訳すると「植物の繊維」。
天然素材の木質繊維(木材、新聞紙、段ボールなど)を細かく切削攪拌して作られます。
セルロースファイバーは、天然素材の断熱材のため、身体にも環境にも優しいのです。
コストが高くなってしまったとしても、取り入れるメリットは多くあります。

 

 

シロアリ消毒

 

シロアリ消毒には、「農薬系薬剤」と「ホウ酸」による防蟻処理があります。

農薬系薬剤を床下に使用し、床ガラりを設けて、床下空気を室内に取り込むことはお勧め致しません。農薬系はシロアリのみしか効果がなく、木材の劣化対策には効きません。

 

一方、ホウ酸は、床下に使用し、床ガラリを設けて、床下の空気を室内に取り込んでも、人体に影響はありません。

そして、ここが一番大事なところ!!!!

 

ホウ酸は、シロアリから家を守るだけでなく、木材を腐食・劣化させる木材腐朽菌からも防ぎ、住宅の耐久性を高めてくれます。

日本の住宅の耐用年数は約26年と言われていますが、これは、「内部結露」が原因であることは目に見えています。仮に内部結露が起きたとしても木材腐朽菌への耐性はあります。(もちろん、内部結露を起こしてはいけません)

 

そしてホウ酸は、何より施工体制が抜群です。
ホウ酸の施工により材料が濡れて、乾燥すると床下地が真っ白い粉になっています。

 

責任施工でホウ酸処理をしてくれる会社が日本ボレイトさんです。
https://borate.jp/borate/borate.php

 

当社では、日本ボレイトさんの安心・安全、長持ちする住宅を目指すところに共感し、全棟、ホウ酸による防蟻工事を当社スタッフ立ち合いのもとで行っています。

※シロアリ防除業者さんが使用する農薬系の殺虫剤では現場の立ち合いができません。

 

 

窓

弊社サッシは、国内最高基準の断熱性を誇り高い省エネ効果を発揮する樹脂窓、YKK AP社の「APW330」の樹脂スペンサーが標準仕様になっています。

サッシには、「アルミ」と「樹脂」とがあるのですが、どうして当社は「樹脂」を選ぶのか。それは樹脂サッシは、(1)断熱性能が高く、(2)結露が生じにくいというメリットがあるためです。

ここ北杜市やお隣の長野県富士見町では、冬にいかに室内を暖かく保てるかが大きなカギとなるのですが、実は、家の熱が逃げる場所、熱が入る場所は、サッシの開口部なのです。ですから当社では、この部分に断熱性能が高い樹脂のサッシを利用しています。

熱が逃げやすいサッシを用いると、室内を暖かく保つにはその分の暖房費がかかります。サッシににお金を掛けないで高いランニングを払い続けていくのも一つの方法ではありますが、新築~住宅ローン等~光熱費を30年間で払い続けると総費用は一緒です。
であれば、高性能の快適な住宅に30年間住み続けた方が、お得だと思いませんか。

初期費用が足りなければ、設備・床材のグレードを下げて(ただし、合板フローリグはやめてください)、それでも足りない場合は間取りを小さくしましょう。

断熱材の性能は絶対に落としてはダメです。むしろ上げてください。
見えないところをリフォームすると余分な金額がかかりすぎます。
見える所は、お金ができたら簡単にリフォームできます。

これが賢い家づくりの考え方です。

 

ちなみに当社では、開口部に断熱性能が高い樹脂サッシを利用するだけではなく、冬に暖かい日差しを最大限に取り込むことによって暖房のランニングコストを抑える設計を必須としています。30年間でのランニングコストを考えると、こうすることで大きな金額差が出ます。

住宅の設計で重要なのは、「間取り」よりも「南からの光」です。
そもそも暖房器具など不要な住宅を目指すべき。それが当社のポリシーです

高性能な暖房器具を入れて「家が寒い…」と言われることが工務店にとっては恥です。

 

※夏場は強い日差しで暑くなるのでは…と思う方もいるかもしれません。
 詳しい事はここでは書きませんが、当然、それも考慮に入れた設計をしています。

 

気密

 

気密

気密が悪いとどうなるか。
断熱性能の低下を招きます。無気密=無暖房 になります。

一方で、気密が悪いと換気能力が下ります。
空気が循環しません。

 

たまに、寒いからと冬に24時間換気を止められる方がいらっしゃいますが、場合によりカビが生えますのでご注意ください。絶対に、24時間換気は止めないでください。

また、排気口には網付きのガラリは使用しないでください。
埃がたまり、目詰まりします。網がないと外から虫が入ってくると思われるかもしれませんが、排気の風が出るので虫は入ってきません。(換気を止めると虫が入る時があります)

※気密が良くても、ここ北杜エリアは自然が豊かなので、当たり前のように室内に虫が入ってきます。

 

軒天(のきてん)のケイカル板有孔穴付きの場合には、木下地で換気量の有効面積が必ずっと言って良いほど減りますので、軒先換気口を設けた方がいいです。(何らかの工夫をすれば別ですが…)

 

気密との関係でぜひ皆さんに知っていただきたいのが「24時間換気システム」の設置が義務化された理由です。

建築基準法の改正で、室内容積の空気を2時間に1回以上入れ替える機能を持った換気システムを24時間稼働させなくてはいけないということが義務化されました。
どうして空気を換気しないといけなくなくなったのでしょう?

それは、「F★★★★」の建材を使用しているためです。

このFで始まる記号は「エフ・フォースター」と呼び、「ホルムアルデヒド」という有害化学物質の発散量を表しています。「F★」「F★★」「F★★★」「F★★★★」の4種類があり、星の数が多いほど発散量が少ないことを示しています。

一見すると、「F★★★★」はホルムアルデヒドの発散量が一番少ない建材だから安心なように思えますが、ここに大きな落とし穴があります。

現在、シックハウスの原因となる化学物質に対して厚生労働省では、人が健康に住めるための目安となる室内濃度指針値(13物質)を公表しています。そのうち、現時点では建築基準法の対象としてホルムアルデヒドのみが規制されているというわけです。

 

「F★★★★」の建材は、13の化学物質の使用を禁止しているわけではありません。さらに、13物質以外の化学物質は何でもありの状態です。ですから24時間換気システムが必要というわけです。

 

一方、無添加住宅では、自然由来の建材と接着剤を利用していますので、シックハウスの原因となる化学物質はほとんど測定されません。

※もちろん(義務化されていますので)当社でも24時間換気システムを設置しますが、それは化学物質を外に出すためではなく、湿気が滞留してカビが生えないようにするために使用しています。

さらに、空気測定を行い、空気環境のみえる化を図り、空気環境に詳しい先生にアドバイスをいただきながら設置を進めています。

 

「F★★★★」の建材だから安心なのではなくて、健康の体に、「F★★★★」の建材が悪さをしてしまうことがあるのです。

 

【家は空気環境】

健康住宅って何でしょう。
当社では次のように考えています。

 

断熱性能が世界水準に近い
 (外皮熱還流率UA値0.46以上が弊社の標準仕様です)

2020年は全棟「フラット35S」以上の断熱性能でないと建築できない
 (一概には言えませんが簡単なイメージとして)

C値(気密性能)が高い
 (この数字にも実は落とし穴が多々あります)

 

気密の話をしているのにこんなことを言うのも変ですが、
これらを踏まえた上で一番大事なのは、実は、「家が呼吸すること」なんです。

 

内部結露

 

住宅の見えないところを考える

結論から先になりますが、「2020年の省エネ基準義務化」以降は住宅の断熱性能は「フラット35S」基準になるので、内部結露が減る方向性になります。

ただしこれは、グラスファイバー、ウレタンフォームなどの施工がしっかりされた場合です。
(しっかり施工されるのが当たり前ですが、残念ながら多くの場合..)

 

内部結露は、「露点温度」と「防湿フィルム施工」が関係します。

先日、長野県でこんな話を聞きました。
壁にシミが出て、コンセントで漏電が発生した。コンセント部分を開けたら、外壁材を止めているビスから、水滴が滴り、壁の中がビショビショに。

室内側に見えたビスに結露が起きた原因は、外壁側が-20度で露点温度によるものだと考えられますが、原因がなにかハッキリわかりません。室内側の防湿フィルムは全面貼りもしていなかったようです。

上記の件は防湿フィルムがあれば、結露しなかったかもしれません。

計算によっては防湿層をなくせますが、手間と材料費を抑えて省くのは如何なものかと感じます。

ウレタンの場合は隙間まで届いているかどうか確認できますし、専門業者による施工なので施工不良は少ないです。

一方、グラスウールの場合は施工が難しいので、施工不良が出やすくなります。
今後、省エネ基準の施工講習を大工さんが受ける方向になると思いますので、これからは施工精度は上がっていくのではないかと予測しています。

 

省エネルギー基準

 

今回は「2020年問題」です。

ほとんどの方がご存じないのですが、実は、2020年から住宅建設の基準が大きく変わります。ある一定以上の省エネ基準を満たした家しか、建築の許可が出なくなるんです。

基準はとても複雑に見えますが、おおざっぱに言えばこのようになります。
建物の外皮平均熱貫流率(UA値)が基準を下回る(数値が少なくなるほど性能が高い)性能の住宅にしなければ建築ができない

 

省エネルギー基準

ここ北杜市は、地域区分「3、4、5」の地域です。

 

※建物の総和なので、断熱材の性能が足りてなくてもクリアが出来てしまうので注意が必要です。以前のトレードオフ制度がただ変わっただけです。

 

そして、1次エネルギー消費量を減らす。なんのこっちゃですよね。
これは、化石燃料を極力使用せずに地球にやさしい住宅を作りましょう。とのことです。

当社が試算したデーターでは、35年間のトータルコストがかなりお得になりました。

尚、地域区分「4」の「UA値0.75」は、世界的に見て低すぎる断熱性能なのです。
弊社標準仕様は「UA値0.46」、かつ、呼吸する住宅になります。それが当社の家づくりです。

 

最後に何度も言いますし、何回も書きますが、すべては「施工レベルがしっかりしている」ことが必須条件です。

残念ながら、建築を携わっていて「しっかり施工ができていない事例」に出くわすことはあります。やり方を知らないからちゃんと施工できていないのか、知っているけども施工していないのかはわかりませんが、悲しいことにそのようなことは実在します。

 

当社は「より良い家づくり」を目指しています。毎回発見があり、毎回試行錯誤を繰り返しています。限界は無いので「よりよく」するために何をどうするか、日々探究する楽しい毎日を過ごしています。

 

断熱、気密

 

住宅の見えないところを考える住宅の見えないところを考える

建築中の現場に、日本住環境さんにお越しいただきました。
断熱施工の知識と施工能力のチェックのためです。

熱画像で見たところ、お陰様で欠損はありませんでした。
熱橋部分は必ず出ますが、(その数値の読み方があるので詳しくは書きませんが)
生活していて1階・2階の温度の差が5度以内ならば特に問題はありません。

 

日本住環境さんのお話をうかがって、ますます究極の家づくり(「美味しんぼ」みたいですね~)をしたくなりました。

究極の家とは、「何も感じない家」。
夏・冬ともに快適だから、暑さ、寒さがない家です。

敷地条件で変化しますのですぐには達成はできませんが、目指していくところではあります。

 

また、「見えないところ」を「見える機能」で調査する。これは大事です。
人的ミスは必ず起きてしまいますので、大事な家を『創る』立場として、今後、全棟取り入れたいと思います。

 

そして、気密ですが、「C値=0.1」などは求めません。

参照:http://mudanreibou.jp/about02.html(Q値は今後UA値になります)

 

最低「C値=0.5~1以内」で良いかと。
というのも、気密を数値で求めても弊害が出てきてしまうからです。丁度いい数値が快適な生活空間を生むと考えます。

そして気密測定は、修正できる時、引き渡し後、2回調査することをお勧めいたします。

最後に、断熱・気密の正しい知識は、インターネットが普及している現在ではありますが、残念ながらネット上の情報だけでは判断できません。本を読むことや、講習を受けるなどしなければ正しい知識は身に付きませんので、そこは私たちにお任せください。

なぜならば、私たちが「プロフェッショナル」だからです。
特に私は、「断熱マニア」です。(お恥ずかしい。。。)

 

 

住宅の見えないところを考える、いかがでしたでしょうか?

見えないところこそが、家族の暮らしを支えているということにお気づきいただけたでしょうか。

そして、もう一つ、住宅の見える部分は家を建てた後でも比較的容易に取り換え可能な一方で、見えないところは取り替えるのには大きなリフォームが必要になります。

だからこそ、家を建てる前にいっぱい知って、じっくり考えていただきたいと思います。